2009/01/14
そもそも
ものすごい音楽的才能を
持ち合わせた人は
この世の中に
数限りなくいると思う。

そんな人たちが
世の中に
姿を現すことが
少ないのは
その感性や
たぐいまれな才能を

人に伝える「技術」を持ち得ない

たったそれだけの理由に思う。

その才能は
「手段」さえ見つけることが出来れば
他人が目にする機会を得るのだ。
音楽家において
その真価は
40過ぎて60歳くらいまでの中の
ほんの短い間に凝縮している事が多い気がする。

若くして才能を見いだされた過ぎた人は
その後、少しずつ忘れられ
時代とともに流されていく人も少なくない。

さて、技術とはいったい何であろうか?

それは単に訓練を積んで
得た技術でしか無く
音楽的才能とは別のものである。
小さい頃から
訓練を積めば
それなりの技術は身につく。

しかし、
ある時期を過ぎてしまうと
いくら訓練を積んでも
技術は身につかないという
一面は確かにある。

いや、身につかないというのは語弊であると信じる。
身につくのに時間が掛かりすぎてしまうために
途中であきらめることが多い
というのが実際のところだろう。

それを証明する統計はここにはないが。
さて、
長い前置きになってしまった。

音楽的技術とは
生まれて
育てられ
その中で
自然と
身についてくるものもある。

周りに流れている音楽や
親の歌う子守歌
テレビから流れる歌に会わせて歌う
歌・・・

そんな日常に存在する音から
意識的に「教育」する
ピアノのレッスンや
ヴァイオリンのレッスン。
音楽教室に通わせ
音感の訓練を小さいときからする
など

そこまで行かなくとも
音楽の授業では
歌を歌い
音譜を読み
技術や理論を
習得しようとする。
最近気づいたことなのだが
小学生の頃
歌を歌うのが大の苦手だったのは
こんな環境のせいであるという事。

クラスにたいてい一人か二人くらいいる
音痴

いや、この「音痴」ということばを使うのは
問題があるかも知れない。
音痴というのは
音程を把握できない真性の音痴と
音は分かるがその同じ音を「声」で
出す技術がない音痴とあるそうな。
私は後者の方である。
いや、それにもまして
耳で培われた・・・!?
悪い音程が入ってしまっているので・・・!!???
そんな私が
音楽コースのある
高校へ何も知らないまま
音楽を愛するが為だけに
入ってしまったのだから
一大事件である。

しかし、
その
音楽を愛する心は
どこでも習得できないものなのだ。

だが、
世の中はそんな「才能」を
認めてくれる余地はまったくない。
私はすばらしい作品や
演奏を聴き
私も同じような曲を作り
私が受けた感動を
そのまま自分が
世の中に与えることだけを
考え
100年後を夢見て
音楽家としての
勉強の第一歩を
神奈川県立弥栄東高校音楽コースで
踏み出すはずだった。
そこでまず直面するのは
何も出来ない自分であった。

入学して間もない5月。
コーリューブンゲンの試験があった。
Cor ??bungen
合唱のための練習という意味のこれは
歌を歌うのの音程を採るための練習曲
といったようなものである。

学校の音楽の授業で
メロディー聴いて歌うことはやっても
楽譜を見てそれでいきなり歌った事なんて無い。

しかしここにいる人は
みんな当然のごとく
そんなの出来て当たり前なのである。

楽譜見てメロディーが頭に思い浮かぶのが前提で
採りにくい音程などを正確に
筋肉が反応し
そこに行くための訓練である。

出来て当たり前の世界で
そんなの出来ないとは言えない。
必死に食らいついていくしかなかった。

そして
私にとって
入学ひと月ちょっとで
死刑宣告にも等しいことばが
下されるのである。

コーリューブンゲンの試験の時
ソーラシドーシドレーミレドー
あの曲は一生忘れられない。
暗譜は一応した。

そして個室に入り
先生が最初の「ソ」をピアノで弾く。
しかし、その
「ソ」の音程を出せない・・・わからない。
先生が声を出して歌ってくれたおかげでやっとわかって
歌い出すことが出来た。
そして何とか最後まで歌い終わった。

そしてしばらくの沈黙の後
「こんなのも歌え無くって音楽コースに何しに来た
まして作曲やりたいなんてとんでもない」
全くその通りなのだから仕方がない。
何も返す言葉はなかった。
私はそのあと
一週間くらい学校を休みました。
その間、たぶん
学校を辞めることも
音楽を辞めることも
考えていたと思います。

あの時のことは
決して忘れることはないだろう。

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