2018/09/28
湯浅譲二《原風景》
Jōji YUASA (1929-) “To the Genesis“ (1988)
この作品に出会ったのは1995〜6年頃であろうか。
芸大の学生時代に楽譜を見せてもらった事がある。
その時は非常に複雑でとても私が演奏できるとは思えなかった。
湯浅譲二のオーケストラ曲は当時いくつか聴いていたが、それも私にとってはとても難解であった。
しかし共通して感じていたのは楽譜や音からとても強い何か哲学的な物を感じていた。
それからしばらく経った2005年、日本音楽集団の定期演奏会で演奏して欲しいとの話しが持ち上がった。
あーあの時の曲だと思いながら、これは大変な練習が必要だと覚悟を決めて引き受けたのであった。
多声部で書かれ、それぞれが対位法的に複雑に絡まり合いながら曲は進んで行く。
技術的な難しさはともかく、音楽的に演奏すればするほど奥が深く、学生時代にはとうてい理解できなかった物が少しずつ紐解かれていく感じがした。
私が2005年に再演するまで17年間も演奏される事がなかった。
それはある意味納得できる気がした。
再演以来私はこの《原風景》を数多く演奏している。
特にヨーロッパで活動していた時期には必ずプログラムに入れていた。
今回のリサイタルの「超絶技巧」とはまた別の意味の「超絶技巧」ではあるが、今回演奏会の冒頭にこの最も得意とする曲を置いた。