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2007/08/16
シューマン作曲
「詩人の恋」Dichterliebe
ハイネの詩に付けられた16曲からなる
歌曲集「詩人の恋」の第3曲。
Die Rose,die Lilie,die Taube,die Sonne
ばらも、百合も、鳩も、太陽も

つづきです

曲はこれも簡単な2部形式
A (a,a)B(b,c) コーダ(a’)
しかしここには非常に緻密に組み込まれた
作曲の教科書のような見事な構成がちりばめられている。

音楽の友社 新編 世界大音楽全集 シューマン歌曲集I

まずは全体をまとめると次のようになる。
見事な統一感と変化に富んでいる。

A
a 1+1+2 速い動き。順次進行
a 1+1+2
B
b 2+2 長い音・フレーズ。上行
c 1+1/2+1/2+1/2+1/4+1/4+1(1/2+1/2)   跳躍進行。和音の移り変わり
コーダ

a 1+1+2
というのは一番旋律の自然な形。
まずは16分音符の速い動きと順次進行が特徴のa
そしてbは長い音符・フレーズになります。

leggieroなaの部分に対比し
legatoなb

2小節かけて順次進行で上行していく形が2回
2回目でクライマックスを作っています。

2曲目でも書きましたが起承転結の「転」の部分に
一番のクライマックスが来るのは理想的な形です。

最高音のeはこの後にも出てくるが
cは再びleggieroな
雰囲気なので音楽的な頂点は
ここと言っていいでしょう。
和声的には2小節ずつ
D-durとG-durのカデンツをやっているに過ぎません。
さらにcは跳躍進行と
短い単位での和音の切り替わりが特徴。

これは恋のうきうきした
飛び跳ねたくなるような心境でも
表現しているのだろうか?

シューマン・・・と言うか
「詩人の恋」の中では
このような形は逆に作られた
諧謔的なものを感じてしまう。
和声的に見てみると
1+1/2+1/2+1/2+1/4+1/4+1(1/2+1/2) に当てはめると 
VII7 III7 VI7 II7 V7 I (II V7)

ちょっと見づらいけど・・・
7-3 6-2 5-1
・・・と・・・こういう進行なんて言ったっけ・・・?

最後のピアノの部分は主音上の和音なので
bで転調し細かく移り変わる和音があり最後に主調上で
安定して終わるというとても構成上考えられた作りである。

そこで、音楽と詩を対比してみる。

Die Rose, die Lilie, die Taube, die Sonne
Die liebt’ ich einst alle in Liebeswonne
Ich lieb sie nicht mehr, ich liebe alleine
Die Kleine, die Feine, die Reine, die Eine,
ばらも、百合も、鳩も、太陽も
かつて私は愛の喜びであった。
私はもはやそれらを愛さない、私が愛するのはただ
かわいくて、すてきで、清らかな、ただ一人だけ
"ここまではどうでもいいのかなぁ・・・"
そして音楽的に最も重要なb

Sie selber, aller Liebe Wonne,
Ist Rose und Lilie und Taube und Sonne.
それら自身、すべての愛の喜び
それはばらと百合と鳩と太陽
最後に繰り返しているこの部分は
Ich liebe alleine
Die Kleine, die Feine, die Reine, die Eine,

これと対比しているように思える
Ist Rose und Lilie und Taube und Sonne.
私にはどうしても
Sie selber, aller Liebe Wonne,
Ist Rose und Lilie und Taube und Sonne.
以外はどうでもよく
さっと通り過ぎ
最後は茶化して終わっているように感じてならない。

それは他の曲に見る詩との対比より
作曲的・器楽的志向が前面に出ているからなのだろうか?

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