2009/05/20

技術に
寄りかかれば寄りかかるほど
小さな事故は
大けがとなる

感情に走れば走るほど
技術は
コントロールできなくなる。

鍵盤の上に生える
松の葉
そこからは
宝石のような音が
紡ぎ出される。

鍵盤の下には
太い幹が生え
根は舞台上の下に張り巡らされ
会場全体を覆い尽くす

ポリーニの音色の美しさは
一応知っていたつもりだったが
きらきらと輝く
指先から紡ぎ出される音色は
磨き抜かれた宝石のような
色彩を放っている。

これが「今」たどり着いた
ポリーニの音楽なのだろう。

しかし私は前半少々戸惑った。
鍵盤からハンマーを伝わって
会場中を覆い尽くすきらびやかな宝石箱。
しかし、鍵盤の下には大きな空洞が広がっている。
根はなくなり
鍵盤の下から幹は
地面に付く前に
枯れてしまっている。

人間歳を重ねれば
必ず筋力は落ちていくものである。
そして、若い時のような気力は
違うものにかわっていくのであろう。

これを老化と見るか
進化と見るかは
見方によって違ってくるものだと思う。

もしこれを衰えと本人がとらえるのならば
クライバーのように演奏しなければいい。

しかしポリーニは
いぶし銀のような色彩を放っているのである。

特に後半のシェーンベルクなどは
今のポリーニでこそたどり着いた
極地ではないかと思う。

その幹が根を張り始め
がっしりした姿を見せたのは
後半も最後、アンコールの中でであろうか?

私の聞きたいポリーニはここにあった。

どっしりと大地に根を張り
会場中をのみ込む。

しかし、そこに
技術と感情のギリギリのバランスは
すでにない。

それをコントロールする術を身につけたと言う見方もある。

ただ、私はそんなものをすべてかなぐり捨てて
最後のアンコール3曲を弾くポリーニの姿を
みれたことが本当に嬉しかった。

もうちょっとそんなポリーニを聞きたかったのだが
3曲目が終わった瞬間私は
「おじいちゃん早く帰ってお休み・・・」
と心の中でつぶやいていた。

ポリーニはどこまでいっても
ポリーニであり
その音は
まぎれもなくポリーニである。

その進化の過程を
また見届けたいなぁと・・・。

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