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2020/05/10

編曲するということは

単に旋律を他の楽器/編成に移すだけでなく

別の楽器/編成で元の音楽をより良い形で再現しながら

作曲家の色も付けていく作業だと思う

先日も同じようなことを書いたが↓

編曲

 

笙という楽器は単音での響きはあまり豊かではなく

音が重なることによって、響きは二倍三倍と膨らんでいく。

 

作曲のための笙の楽器法にも書いたが、

ただ単に単旋律のメロディーをあてがうだけでは

空虚な響きとなり、

また楽器の構造上、安定した動きを作ることが容易ではない。

Instrumentation 楽器法

さらに出せる音の組み合わせが非常に限られているので

何か旋律をこの楽器に当てはめようとしても

大抵の場合困難を極める。

 

さて、下の楽譜だが《お正月》の冒頭部分

ソーラーソラ

というメディーは容易に演奏できる。

私はこの出だしをソの音を延ばしたまま

ラを抑えて、ラを放した時にソが聞こえる

という編曲をしている。

このような奏法は雅楽の曲である「調子」の中に数多く出てきている。

「打」と書いてあるのは押さえて放すことを意味している。

当然押さえた音は聞こえるのだが、

大抵の作曲家はこの放した時に聞こえる音を意識して書くのは難しいであろう。

笙の長二度の豊かな響きと、和音から1音になった時の効果と

その旋律の際だたせ方を用いた編曲法である。

 

上に書いた「和音から1音」になる時の効果の例。

Happy Birthdayの出だしの部分である。

ここでは「残」という奏法

和音の中から1音だけ残し、他の音を放す。

この効果も「調子」や「音取」、また止手などで用いられている。

和音(合竹)から1音になった時の響きもまた得も言われぬ美しさを持っている。

 

つぎは《ほたるの光》の一節

シ ラ ファ♯ ファ♯ レ

のメロディーだが

1、レファ♯ラの和音から音を抜いていき、残った音が聞こえる編曲法

2、ラファ♯レの順に音を加えていき、加わった音が聞こえる編曲法

これはどちらもとても良い効果を生み

前者は音が減っていく分やや寂しくなっていき、またdiminuendoの効果も生む。

後者は音が増えて行くことにより、より厚みを増し、crescendも容易に行える。

またAuftaktのシの扱いも1と2で変えてみた。

1はここで気替(吐息⇄吸気を入れ替える奏法)を行えるのに対し

2では和音から1音残すことにより、リズムを出すとともに

上述の得も言われぬ美しさを生むこともできる。

 

つぎは

《春の小川》の冒頭部分

ファ♯ラシラ

という上がって下がる旋律

上がる時には音を加えていき、下がる時に音を減らしていっている。

この方法はまた、逆に

音を減らす+音を減らす

という方法でも同じ旋律を聞かせることができる。

(ファ♯ラシの和音を鳴らしておきそこから減らして行く)

またそれぞれの方法は逆の音形でも作ることができる。

もちろん和音にせず、1音ずつ鳴らせば、より旋律は明確になるし

どこかを重ねてどこかを単音にするという方法もある。

前後の音の関係や

音楽的方向性によってこれらを選択することになるだろう。

 

まだまだ、様々な作曲/編曲テクニックはあるのだが

ここでは書ききれないので、

いずれ作曲法や演奏法としてまとめられれば良いなぁ

 

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