2020/01/28

先日、音楽家数人と色々話をしていて

音楽家の資質って何だろうと考える機会があった。

 

資質;生まれつきの性質や才能。資性。天性。

 

ここで話題にするのは音楽家がどんな能力や才能を持っているかではなくて

単純に

「この人音楽家として生きていくことができる」

と感じる人はどういう人なんだろう?

という事。

 

技術があるとか良い音楽性を持っているとか

そういうものは必要なものだけど

いくらそれがあっても音楽家として生きていけない人もいる。

逆に(私のように)技術がなかったけど生き延びている人もいる。

 

続けていくのも才能のうちのひとつだ。

こんなに技術も能力も才能もあるのに

と思う人が辞めていくのを数多く見た。

結局は仕事として成り立たず、あるいは仕事も演奏の機会もなく

辞めていってしまうというのが多い。

辞めてしまってはそこまでにどれだけの実績があろうとも

後から評価されるという事はまずあり得ない。

(作曲家か演奏家でも演奏した録音が残っていて誰かが発掘して蘇らせない限り。)

 

とにかく音楽家として生きていない限り音楽家とは言えない。

音楽家として生きるというのは、演奏や作曲をして収入を得るという事とはまた違う。

何の演奏の機会も、作曲家でも演奏される機会がなくても

音楽家や作曲家として生きている人もいる。

逆に仕事があるだけで音楽屋、作曲屋で生きている人もいる。
(それはそれで良い事であり、どちらがどうとかいう議論に興味はない)

 

だいたい、音楽家として生きていける人はひと目見て、
あるいはちょっと話をすればすぐに分かる。

直感ではあるがそういう音楽家は何をしてでも音楽家として生きている。

それを言語化して共通の特徴やなぜそう感じるのかを具体的に説明できそうな気がしてきた。

まず一つに、そのような人は、人間であるのと同じように音楽家として生きているんだ。

誰かが認めて音楽家になるとかではなく、すでに音楽家になっているんだ。

 

昨日話をしていた内容

良い音楽とか上手い演奏とか、良い奏者、引きつける音

誰も聞いてくれない音、あれ始まっていたの?といううちに始まる音楽

1音鳴った瞬間に注意を引きつけられる音、音がなる前から空気が変わったという音楽

その違いは何だろう?

「音が大きいとかではなくて、音に意思があるかどうか」とM氏

私の場合はどうだろう?その場にいるすべての人を楽器に引き寄せようとしているというか・・・会場の全ての空気を楽器の中に入れようとしているというか

そういう点では2人の共通認識として会場全体の空気を振動させようとするというのは同じ様な方向性でもある。

ただ出てくる無意味な音は、その場にいる人を引きつける力を持たない。

何かの意思を持っている事は絶対に必要である。

ただ書いてある音や教わった事をやっている音には意思がない。

自分で考えて出した音こそ意思がある。

しかし、考えたと言っても何か説明できる様なものでもない。

無意味ではなく、ただ出しているだけではない、考えずに演奏していない

という意味で考えて音を出していると便宜上当てはめて言っているだけだ。

(否定の否定が肯定にはならないのだが)

 

例えば楽器を試し吹きしている時に私にはその人の能力が見えてしまう。

楽器ーInstrumentは道具である。

道具の調子を見る。

楽器は道具であるが、そこから出てくるのは音楽だ。

無神経な音。

ただ楽器の調子を確かめるために音を鳴らす。

しかし私はそこでも無神経には音は出せない。

常に良い音楽や音を出すために日ごろ鍛錬しているので

ちょっと鳴らすにしても無神経な音は聞きたくもない。

というかそういう音自体出す事が出来ない。

(下手な人の真似をして吹けと言われてもなかなか難しいように)

そこで楽器の音だけを鳴らす人はやはり資質がないと感じてしまう。

 

楽器は道具であってもその先に出てくる音楽の通り道であって身体の一部でもある。

だからモノとしての意識はあってもその先の音楽を意識しているので

単体として無神経な音を出す事が出来ない。

 

楽器の扱いにしても身体の一部だと思っているので自分の身体と同じように大切に扱う。

無神経な音、意思のない音を出すという事は楽器を雑に扱う事と等しい。

だからその辺に置き去りにとか出来ないし、その身体の一部がなければ音を出すこともできない。

そんな音楽家の心構えみたいな話になってきたが

それは教わったりそうしなきゃいけないとかで変わるものではなくて

音に対する向きあう態度の違いであり

それこそが資質なのかなぁと

考えている今日この頃でした。

 

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