2017/11/14

≪舞う≫ 修験と巡礼の道

今年初めころ
能楽師の津村禮次郎さんから連絡が来た。
次の公演の音楽と演奏をお願いしたいと。

津村さんとは文化庁の文化交流使の会で知り合い
お会いするたびにお話しをしていた。
私より一年前に文化交流使として活動したとのこと。

どの様な事をしたらよいのか最初は分からないまま
いくつかの公演の映像をみた。

能とバレエの全く動きの違う異質の共演
また弦楽四重奏や太鼓、雅楽の楽器との共演。

私の中にはこれらの異質の物をどう組み合わせて
動きや音楽に意味を持たせるのか興味があった。

もちろん音楽が踊りの伴奏になるような
そのような仕事をするつもりもなく
またそのような音楽を作れるほど器用でもない。

何をどうして良いのか分からないまま
春が過ぎ夏前の6月
演奏会場である能楽堂の下見に訪れた。
笙と和太鼓はすでに決まっていたが
私が無理にお願いしてヴィオラ・ダ・ガンバを入れてもらった。
かねてからいつか一緒に演奏したいと思っていた多井さん。
これで管楽器・弦楽器・打楽器が揃う
そしてそれぞれが伝統楽器でありそれぞれ違う音楽を持つ。
これらを元に音楽を構想していこうと考えた。

しかし作品のコンセプトの全容が分かるのは8月の初めのことであった。

どのように今回の作曲を進めて行けばよいのか
ダンサーとどの様に共同作業を進めるのか

本番まで3ヶ月ほどと時間が無い中で
曲を作るにはとても多くの時間を必要とする私としてはとても困惑していた。

すでに同じテーマで何度か公演をしていることや
この場面にはこんな音、この楽器が良い
などという先入観を打ち消すこと
まずはここから始めなければいけなく
これを後から入ってきた私が行うというのは
よほどの信頼を勝ち得ない限り難しい作業というのはさいしょから見えていた。

コンセプトやテーマを熟知し
動きの意味を理解し
全く新しい作品として音楽を作り上げること

音楽側から解釈し音楽作品として作曲すること
踊りの伴奏音楽ではなく

おそらくたいていのバレエ音楽というものは
例えばチャイコフスキーなど
おそらくストーリーがあってそれにそって音楽を作り
音楽に合わせて振りを付けるのが普通の流れで

音楽というのは全体で構成しているので
ちょっと長いからどこかをカットするとか
(いろいろな場面でこういう事を安易にやっているところもあるが)
1小節短くするには全てを書き直さないといけないと言うこともあるということをなかなか理解してもらえない。

そしてここにこんな音が欲しいとか

でもそこにこんな音を入れたら
他にもこんな音を入れたりそんな音を入れないと
ただたまたま鳴った「効果音」であって
「音楽」ではないのだということを理解してもらう事も簡単ではない。

私は作曲家なのでこの辺りはどうしても自分の作品として演奏する以上こだわりたかった。

それにしても振付があって
(ところどころ無く・・・)
それに合わせて曲を作れと

いや、振付に合わせて音が欲しかったのだろうが
私は効果音や背景の音を作るつもりはなかったので
作曲した

これはかなり無謀というか
振付はいろいろやりながら変えていくことができるようだが
即興演奏ならその場でいろいろ変えていけるから
そのようなやり方でやるのが普通なのだろうが

(私は即興は得意でないので)

曲を書いては長さが合うのか
思っていた音のところに
振付が合うのか
試行錯誤であったが

(このように不平不満を書き連ねてきた割には)

この作業が徐々にしっくりとはまってきて
すらすらと書けるようになってきたのだ。
(といってもかなりの時間と労力を要するのだが)

本番までの日数を考えると追い詰められていたが
何故かこれができる確信があった

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