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笙韻若水(しょういんみずのごとし) 

〜真鍋 尚之 作曲と笙の世界〜 

As It Flows  — The Resonance of Sho 

Composed by Naoyuki Manabe

レコード芸術2018年7月号準特選盤
音楽現代(芸術現代社)2018年8月号推薦盤

2018年6月7日新発売

 

1 呼吸III  KOKYU III  for Sho 

                                                            …..6’25”

笙:真鍋尚之 Sho: Naoyuki Manabe

 

2 呼吸III  KOKYU IV  for Sho 

…..11’57”   

笙:真鍋尚之 Sho: Naoyuki Manabe

 

 

3 箏四重奏曲 Quartet  for Koto 

 …..14’36”

箏:螺鈿隊(市川慎・山野安珠美・梶ヶ野亜生・小林真由子)
Koto: RADENTAI (Shin Ichikawa, Azumi Yamano, Ai Kajigano, Mayuko Kobayashi)

 

4 呼吸V  KOKYU V  for Sho 

…..7’32”

笙:真鍋尚之 Sho: Naoyuki Manabe

 

5 Trio   〜笙と二面の箏のための〜  Trio for Sho and 2 Kotos 

…..14’03”

笙:真鍋尚之 Sho: Naoyuki Manabe
箏:梶ヶ野亜生・山野安珠美 Koto: Ai Kajigano, Azumi Yamano

 

6 対峙II   〜笙と中国笙のための〜 Taiji II for Sho and Sheng 

…..15’51”

笙:真鍋尚之 Sho: Naoyuki Manabe
中国笙:吴巍 Sheng: Wei Wu

total playing time   …..70’53”

 


ライブ録音 Live recording

1,2 真鍋尚之 笙リサイタル Vol.3 〜独奏への試み〜 2003年10月22日 浜離宮朝日ホール
    Naoyuki Manabe Sho Recital Vol.3 at Hamarikyu Asahi Hall, 22 October 2003

 

3,4,5 真鍋尚之笙リサイタル Vol.4 作品個展 2006年11月7日 浜離宮朝日ホール
     Naoyuki Manabe Sho Recital Vol.4 at Hamarikyu Asahi Hall, 7 November 2006

 

6 真鍋尚之 笙リサイタル Vol.7 対峙 2012年12月25日 東京オペラシティ リサイタルホール
     Naoyuki Manabe Sho Recital Vol.7 at Tokyo Operacity Recital Hall, 25 December 2012

定価2,500円+消費税=2,750円
真鍋尚之WEBサイト特別価格 2,500円(送料200円・振込手数料別)

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笙韻若水(しょういんみずのごとし) 

水は万物を利して、しかも争わず。低き所に流るるを善しとする。笙の韻(ひびき)かくのごとし。

真の音を求め、素(エキス)を絞り出し滴りを連ねてゆく。その流れはやがて渦となりーー
そうやって作り出した作品を拾い集めてみると、十五年という歳月が詰まっていた。「あれだけ苦しんだのに」と、相棒の笙に言われても、性(笙)懲りも無くまた之(これ)に呼吸(いき/生命)を吹き込む。数々の賞を受けながらも尚、音に対峙し、もがき続ける一人の男の軌跡。

 


真鍋尚之の軌跡/奇跡
「笙韻若水」を体現する作曲家/笙奏者

 

川島素晴(作曲家・国立音楽大学准教授)

 

 真鍋尚之と私は同学年である。異なる大学でお互い作曲を学ぶ中、山口県秋吉台の現代音楽セミナーで初めて出会う。笙の第一人者、宮田まゆみも講師の一人だったが、その頃の真鍋はまだ純粋に作曲学生として参加していた。しかしほどなくして1993年から小野雅楽会に入会、笙の道を歩み始めることとなる。その転身を知ったのは翌1994年、東京芸術大学に新設された雅楽専攻一期生として後輩になった(たった1年の修行で!)ときだが、私は4年生であまり大学にも行かず接点がなかった。笙奏者としての彼をまざまざと目にするのは翌1995年、「現在形の音楽」という作曲グループの第2回公演の折。グループ同人の山口淳は真鍋が洗足学園大学で作曲を専攻していた時代の同期で、笙奏者となった同窓生をいち早く起用して新作の初演を行ったのである。難易度の高い笙パートを見事に演奏する彼の姿を見て驚嘆した。いつの間にこんな優秀な演奏家になったのかと。

 それは彼が自作《呼吸Ⅰ》を作曲した頃でもある。つまりこのとき既に、彼は作曲家/楽人/笙プレーヤーの三足の草鞋を履きこなしていた。笙を始めてたった2年 ― 恐るべき才能である。その3年後には《呼吸Ⅱ》を自作自演して国立劇場作曲コンクール第1位、その2年後に初リサイタル開催。アルバム収録曲《呼吸Ⅲ》は、その3年後のリサイタルで初演した超絶技巧作品で、更にその翌年にはそれを自演して東京邦楽コンクールで演奏家として第1位受賞 ― このあたりの経緯は、ただただ遠目に凄いなぁと眺めて過ごしていたのだが、更にその4年後、2008年のリサイタルに際して真鍋から新作の作曲を依頼された。

 笙を使ったことはあったが、無伴奏の笙、それも彼のために初めて作曲するにあたり、私は少なくとも《呼吸Ⅲ》よりは難しく書こうとしたし、それが求められていると感じ、応えたつもりである。

 2010年のブログで真鍋はこう書いている。

 「彼は『自分が書く以上、笙にとって最も難しい曲を書く』と豪語していましたが、本当にそうなりました。」
 私の目論見が叶ったようだ。しかしそれに続けてこうも書いている。
 「人間不思議なもので、初演の時はめちゃくちゃ超絶技巧だったのが1年も経ってくると意外と普通の奏法に感じられてきます。」

 かくして入魂の挑戦状も、易々と乗り越えられてしまった。

 彼はその曲を今も世界各地で再演しており、こうしてどこまでも技術を進化させる一方で、自作品の《呼吸Ⅳ》、そして《呼吸Ⅴ》では、音への対峙姿勢が「深化」している。私が勢い勇んで彼のための新作を鼻息荒く作曲している横で、彼自身は、既にその次元を乗り越えていたのである。

 

 あれは真鍋と出会った頃だったか、宮田まゆみが東京で笙について講義する機会があった。両耳に手をあて、笙の合竹が醸し出す差音(複数の音が同時に鳴るとその振動数差の音が鳴っているように聞こえる現象)の響きに耳を澄ませることを促された私は、「別にそんなことしなくても」とぞんざいな態度で、他の参加者が一斉に耳に手をあてる中、それに同調せずに聴いていた。そして、合竹の差音などよりも、もっと技巧的な話をききたいのに、と些か不満を感じていた。しかし今にして思う、その提案にどうして乗らなかったのかと。

 笙は、小さなリードを数本ずつ鳴らすだけの楽器だが、それがあの得も言われぬ存在感を放つのは、まさに差音が複合的に響く効果に拠っている。古来日本人は、鳴っていないはずの音域に朧げに響くそれらの差音を「空気感」として味わってきた。だから雅楽の響きは中空になっていて、そこが埋まっていないからこそ天上の響きを体感できるのである。辺りに水のようなものがふわ〜っと偏在し、それがすうっと沁み込んでいくような……そう、それがまさしく本CD題目の「笙韻若水(しょういんみずのごとし)」なのではなかろうか。

 私が真鍋のために超絶技巧作品を作曲してからちょうど10年の時を経てようやく、そのことに思い至るようになった。《呼吸Ⅲ》を超えようとあがいていた当時の私は、《呼吸Ⅳ》や《呼吸Ⅴ》への傾聴を怠っていたのである。今これらの作品を聴くと、楽器とともに鳴り響く全ての振動を体感して作曲している真鍋の音への対峙が手に取るようにわかる。

 それが、演奏も作曲もこなす強みなのであろう。笙の作曲を通じて「笙韻若水」を体現する域での仕事を経験すると、他の楽器のために作曲する場合にも、自然とそのような姿勢で振る舞えるのか、箏にせよ中国笙にせよ、そういった地平での創作が実現している。

 音を聴き漁ることから出発した真鍋は、その幼少時からずっと「笙韻若水」を体感していたのかもしれない。響きが常に自らの内に沁み込むように聴いて育った彼にとって、眼前に捧げ、咥え持つ笙は、作るにせよ吹くにせよ、この上ない「instrument」であるに違いない。

 そのような楽器を手にできた幸福な結婚の果実が、このCDなのである。


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